yahyel / Flesh and Blood ('16):BRC-530

 

 

 yahyelの活動には「匿名化」という明確なコンセプトがあります。海外を徹底的に意識している彼らは、日本人というアイデンティティと周囲の視線を捨てるために現在までそのコンセプトを徹底しているのです。しかし、彼らが初めて発表するアルバムのタイトルは”肉体”。まるでコンセプトを裏切るようにも感じられるこのタイトルを知ったとき、僕は少しの驚きを覚えました。しかし、人間は血肉で構成され、肉体性を用いずに作品をクリエイトすることはできません。それは彼らにも同様のことであり、そこから抜け出すことは不可能です。そこから生じるアイロニーと矛盾がそこに表されているのかもしれません。

 ディストピアが今回のアルバムのキーワードです。トラックには真夜中の都会を一人でさまようような空白があり、”Age”や”Kill Me”にはグロテクスな力強すら感じられます。そして音色、構成に強い個性とこだわりが見え、特に“Joseph”や”Once”などは一度聞くと忘れらず、また何度聞いても飽きることはありません。さらにトラックはクールながらもそのうえで唸る池貝の歌声はまさに”肉体”。クールなトラックの上に鮮血を塗りたくるような粘り、そして捻るヴォイスを聞かせてくれます。ルーツがTom Waitsにあるというのも意外性がありナイス。さらにライヴやPVでは彼らが音で描く世界にdutchのVJが加わり、ディストピアの色彩を豊かなものにし、我々に一種の荒廃した陶酔感を与えるのです。

 

 yahyelというグループ名はニューエイジ思想に支持を受けるチャネラーDarryl Ankaが地球外知的生命体バシャールとの交信を行うなかで登場する地球外高度文明ヤイエルから取られています。バシャールによれば、我々は2015年以降にヤイエル文明とのコンタクトが発生し、そこから高次的文明へと導かれるとされています。2016年の東京という都市の中でyahyelが出現したことは、僕らの知覚や聴覚を次のステージへと誘うファクターを意味するのかもしてません。そして、我々はもはやもとの姿に戻ることはできないでしょう。聴き終えたとき、新たな肉体を手に入れているはずです。