Bill Evans / Moon Beams ('62):RLP428

 

 『Moon Beams』、数あるBill Evansのアルバムのなかで最も秀逸なタイトルと言えるかもしれない。冷たさと暖かさが同居し夜の闇を照らす繊細な月の光、これはまさにEvansが弾くピアノの魅力を説明するのに最適な言葉だと思う。

 62年に発表されたこのレコードはバラードを中心にスタンダードが多く収録されており、ジャケットの女性(Nico)の魅力も相まって非常にスウィートかつ手に取りやすい作品に仕上がっている。しかし、ただ手に取りやすいだけでなく、この頃はBill Evansのキャリアのなかでも最も光が魅力的に輝いていた時代であり、“If You Could See Me Now”には静かに燃えるまきを眺めるようなインタープレイ、“Polka Dots and Moonbeams”にはジャズを超えた音楽が持つ普遍性がある。そして、Chuck IsraelsのベースとPaul MotianのブラッシングはEvansが自己との対話によって内向していく姿に寄り添いながらも、自分が抱えるアイデンティティを失わず、交互作用することで演奏を高めあっています。このレコードには深みと影のある女性のような美しさがあるのです。きっと、聴いたあとの余韻には、温もりと充実感があることでしょう。そしてふともう一度”Moon Beams”に耳を傾けているのではないでしょうか。

 僕はこのアルバムを聴くと、山の頂上から眺める冬の街の明かりを思い浮かべます。なんででしょね?