小林うてな / VATONSE('16):TDPCD002

 

 D.A.N.のステージを観ているとき、僕はいつも小林うてなに圧倒されているような気がします。それは僕がスティール・パンが好きという理由もあるけれど、それよりも彼女のあまりの力強さを引き込まれているからかもしれません。

 

 本作はこれまで蓮沼執太や王舟、D.A.N.などの活動を多彩なプレイでサポートし、またすでに解散しているものの鬼の右腕のメンバーでもあった小林うてなの自身初となるソロ・アルバムです。その内容は変拍子で無機質なビートや、重厚感のある低音、そして逆再生などのエフェクトがかった歌声が狂気がかったうねりを這うようにあげ、都会に流れる冷たい時間感覚と濃密に絡み合うビート・ミュージック。しかし、それを構成するにあたって多様される民族楽器の音色と、彼女が放つオリエンタルな存在感からは、明治神宮や皇居のような都会のなかに存在する森林の奥深くで行われる儀式を隠れて観ているような緊張感、プリミティヴが生まれています。

 

 聴いていると、いつの間にか神秘と狂気の中で小林うてなというファム・ファタールを探している自分がいることに気づくことでしょう。気づいたら最後、あなたも僕と同じように彼女の魅力に引き込まれてしまっているのです。